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第二章 目に見えない肉の値段:食糧不足という俗信

 

環境の破壊をやめて私たちの天然資源を保護するために取りうる最も効果的な行動は、牛肉やその他の肉の消費を減らすことです。私たちの選択には力があります。私たち個人にとって最も健康的なことは、私たちの貴重な、しかし傷ついた惑星の生命維持システムにとっても最も健康的なのです。

ジョン・ロビンズ。「新しいアメリカへの食生活(Diet for a New America)」の著者。カリフォルニア州サンタクルズにある地球保護協会(EarthSave Foundation)の会長

 

食糧飢饉の解決

 ベストセラー『小さな惑星のための食生活』の著者でもあり食糧専門家のフランシス・ムーア・ラッペは、かつてテレビ放送のインタビューで、一切れのステーキをキャデラックのように見なすべきだ、と語りました。「つまり、こういうことです。アメリカに住む私たちは、ガソリンは安価なものという幻想に惑わされ、ガソリンを浪費する自動車を使うことに慣れきってしまいました。おなじように、穀物は安価なものという幻想に惑わされ、穀物で育てた家畜の肉を中心とした食生活に慣れきってしまいました。」

 米国農業省の資料によれば、アメリカで生産される穀物の90パーセント以上は、食卓をかざる牛、豚、羊、鶏などに与えられます。しかし、肉の生産に穀物を使うという方法は、非常に無駄の多いものです。米国農林省の経済調査部によれば、穀物を16ポンド使っても、得られる肉は1ポンドでしかありません。

 世界がその天然資源を汚染し続けている中で、家畜を育てるにあたってもう一つ大きな懸念があります。水です。カリフォルニア大学の農業公開講座の土と水の専門家は次のように示しています。1.牛肉1ポンドを作るには 5,214ガロンの水が必要。(1ポンドは約0.45kg、1ガロンは約4リットル)2.鶏肉1ポンドを作るには815ガロンの水が必要。3.豚肉1ポンドを作るには1,630ガロンの水が必要。4.レタス1ポンドを作るには23ガロンの水が必要。5.麦1ポンドを作るには25ガロンの水が必要。著述家であり活動家でもあるジョン・ロビンズは、「今日カリフォルニアでは、6ヶ月丸々シャワーを浴びないよりも、牛肉1ポンドを食べないほうがもっと水の節約になるでしょう」と書いています。

 アーロン・アルツル博士著『タンパク質・その化学と政治』の中で、1エーカー当たりのカロリーで見れば、穀物、野菜、豆類に基づく食生活の方が肉を食べる食生活に比べて20倍以上の人々を養える、と述べています。現在では、アメリカおよびヨーロッパ、アフリカ、アジアの諸国では、全耕作面積の約半分が畜肉動物の飼料を生産するために使われています。そのため、地球上の全耕作地を主に菜食のための食糧を生産するために利用すれば、200億人以上の人口をかるく養えます。

 これらの事実をもとにして、食糧研究家たちは、世界の飢餓問題は多分に幻想である、と指摘しています。今でも私たちはこの惑星に住むすべての人々を養うのに十分な食べ物を生産しています。不幸にして、それは効果的に配分されていません。世界飢餓協定(The Global Hunger Alliance)は次のように書いています。「餓死のほとんどは、すでにある食料減の不公平な分配と非効果的な利用によって引き起こされる慢性的な栄養不足が原因です。同時に、工場農業(factory farming)として知られる家畜の集中飼育(intensive livestock operation)などの無駄の多い農業手法が、すべての生命が依存する天然資源を急速に汚染し、枯渇させています。これらの方法によってより多くの食料を生産しようとする試みは、単に水汚染と土壌の劣化の増大と、ひいては飢餓の増大につながるに過ぎません。」国連の世界食糧会議に提出された報告書は、これに同意を示しています。「富裕層が必要以上に肉を食べることは貧困層の飢えを意味します。この無駄の多い農業は改善されなければなりません。穀物で牛を飼育する飼育場を制限することが必要です。肉牛の数を大幅に減らすことさえ必要です。」

 

生きた牛は経済的な資産

 牛乳、チーズ、バター、ヨーグルトなどの高タンパク食品を生産しつづける生きた牛の方が死んだ牛よりも人々に多くの食料を与えることは一目瞭然です。第3世界の飢餓の危機を解決しようとして、人々はインドのような国を見て、なぜその国の人々が貴重な穀物を巡って動物と競い合うことに甘んじるのか、といぶかりました。なぜ彼らは牛を食べてしまわないのでしょうか?しかし、ほとんどのヒンズー教徒は牛を神聖であると考え、屠殺しません。この文化的な傾向により、食料エコロジストたちは人間と牛の間の共存を研究し、その関係が実際に競争的であるのか、そして飢餓問題が牛を屠殺することで解決できるのかということを理解しようとしました。ミズーリ大学のステュワート・オデンハルは、インドの西ベンガル地方の牛について詳しく研究した結果、牛は人間の食べ物を奪っているどころか、(モミガラやサトウキビの上部など)収穫された農作物の人間には食べられない残りの部分と草だけを食べている、と報告しています。「基本的に、牛は人間にはほとんど価値のない物を、直接役に立つ製品に変えます。」これは、インドでは人々が牛を殺さないから飢えているのだ、という俗信を打ち消すことになるでしょう。むしろ、インドにおける食料問題は、牛よりも、時々起こるひどい旱魃や政治的な大変動、あるいは産業化が大きな原因であるという研究結果がでました。これは多くの第3世界の国々に共通しています。

 殺さなければ、牛は驚くほどの量の高品質で高タンパクの食べ物を生産します。アメリカでは80年代に乳製品の生産を故意に規制する試みがなされ、政府はバターとチーズと脱脂粉乳を大量に備蓄することを強いられました。その量は毎週45ミリオンポンド(4500万ポンド、20,412,000kg、2万412トン)ずつ増えました。事実、当時アメリカに存在した一千万頭の牛はあまりにも大量の牛乳を生産したので、政府は時折乳製品を無料で貧困層に配給しました。(生きている)牛が人間にとって最も価値のある食料源の一つであるということは、全く明白です。悲しいことに、80年代半ばに、合衆国政府は乳製品を大量に備蓄することで牛乳の値段を支える必要をなくすために、何百万頭もの乳牛を買い取って屠殺しました。 

 アザラシやイルカ、クジラなどを屠殺から守る運動は盛んです。それでは、牛を保護する運動もあってしかるべきではないでしょうか?経済的な点からだけ見ても、健全な考えであるように見えます。

 

肉の値段は思っているより高い

 食肉業者は、経済的にも政治的にも権力をにぎっています。肉食の宣伝に自前のお金を何百万ドルも費やしているだけではなく、税金を不公平にうけとっています。現実的に言って、畜肉業はあまりにも無駄が多く、また高くつくので、この業界がなりたってゆくためには補助金が必要です。ほとんどの人は、政府が食肉産業に無条件の補助金や好意的な貸付保証をしたり、その余剰製品を買い取ることによって、いかに手厚く支えているかに気がついていません。(しかもその余剰製品は多くの場合は処分されます。)これらの政府助成金の値段札は、私たちの子供たちの健康に表れます。2003年には、合衆国の全国学校給食プログラムは生徒たちに低費用の食事を与えるために、学校に60億ドル(600億円)以上も提供しました。これは慈善事業のように見えますが、全国学校給食プログラムはもともと二つの目的のために作られました。一つは収入に関係なく子供たちに健康的な食事を提供すること。もう一つは「牛肉への需要を強化すること」によって農業関連産業を助成することです。肉を主体とした食生活が健康におよぼすあらゆる害を考慮すると、これは私たちの子供たちに、そして助成された給食を受け入れる他にほとんど選択の余地がない家庭に、何をしているのでしょうか?

 今日では、連邦政府は毎年8億ドル(80億円)以上の主に肉と乳製品を買い取り、学校で生徒たちに与えるために提供しています。連邦政府は、肉と乳製品の他に穀物と野菜と果物などすべての農作物を買い取るべきであるとされていますが、ロビー活動(訳注:利害関係者集団による、政治家に対する働きかけや圧力)に直接反応した購買をする傾向があります。2001年には、USDAは学校に提供するために、牛肉および他の肉製品の余剰分に3.5億ドル(35億円)を支払いました。果物と野菜に払った額の二倍以上です。(そのほとんどは缶か冷凍。)より健康的なメニューを開発するために学校と共同して働いた栄養学者ジェニファー・レイモンドは、次のように言います。「基本的に、それは供給者への福祉プログラムです。。。それは農作物生産者のための価格支援プログラムであり、学校は単に購入された品物を捨てる場所でしかありません。」この「福祉プログラム」を運営するお金は税金でまかなわれます。そして、市民は自分たちの子供たちの健康にかかる費用も負担します。かつては珍しかった子供の肥満、心臓病、2型糖尿病その他の、高コレステロールと高飽和脂肪の食事に伴う大人のものだった問題と、親たちが取り組まねばならない現状だからです。

 アメリカ政府は、ほとんど公表されていない動物の病気の問題を調査するために、全国ネットで検査官を保持しています。そのために巨額の税金が毎年、政府から流れ出ています。病気にかかった動物を始末すれば、政府は飼い主に補償金を支払います。これについて、ニューヨーク・タイムズ紙の社説は、この助成金を「非常識だ」とし、「国民の財産を盗むスキャンダルだ」としました。現在では、世界中の先進国の政府が、自国の農家が抱える「狂牛」に対して支払いをしています。2001年だけで、イギリス政府は「狂牛」に9,100万ポンド(1ポンド150円として135億円)以上を支払いました。他の政府も同様の出費をしています。

 

環境破壊

 肉食のために支払うもう一つの代価は環境汚染です。米国農業調査研究機関は、国内の何千もの屠殺場と飼育場から流れ出す、ひどく汚染された排水と下水が、河川の汚染の主な原因となっていると指摘しています。地球上の淡水の水源が、汚染されてきているばかりでなく枯渇してきているのは、急速に明らかになっています。中でも食肉業界は、著しく破壊的です。

 ジョン・ロビンズは、自著「食料革命(The Food Revolution)」の中でこう書いています。「合衆国で一年間に処理される鶏のほうが世界の人口よりも多いのです。鶏が76億、人間が60億です。合衆国には人間よりも多くの七面鳥がいます。七面鳥3億に対して、人間が2億8千万です。さらに、現在では合衆国全体で豚が1億頭、肉牛が6千万頭います。これだけたくさんの動物が出す糞便がどうなると思いますか?それについて考える人がいるでしょうか?」

 動物の糞便(manure、牛糞などの有機肥料)はいつの時代も自然な肥料でしたが、それが山のように貯まると、大変な廃棄物問題になります。不幸にして、その多くは水路に流れ込みます。「肉の大量生産は公害の主要な原因になりました。。。近年では、家畜の糞尿が魚の大量死やフィエステリア(訳注:有毒な藻の一種)などの病気の発生に関わっていると見られています。フィエステリアに汚染された水に触れたり摂取したりすると、記憶の喪失、意識障害、激しい皮膚炎などが起こります。現在、合衆国では家畜は人間の130倍の糞尿を作り出しています。。。これらの巨大農場は急増しており、人口密度の高い地域では家畜の糞尿が飲み水を汚染しています。」(タイム誌、1999年11月8日号)

 

地球温暖化

 大気は複数のガスの混合物からなります。その精密は組成は太古の昔から安定していました。しかし、二十世紀から二十一世紀に移行するにあたって、私たちは大規模な危機に直面しています。自然は私たちの大気の中の酸素と二酸化炭素の微妙なバランスを維持してきました。現在のように二酸化炭素が増加すると、結果は表れています。極致の氷冠は解け始め、海面は上昇し、気候の変動は世界中で明白です。

 地球温暖化に対して最も普通に言われる原因は、私たちが大量の化石燃料を燃やしているというものです。(汚染物質の)排出量は、もちろん産業化された国々が最大です。これらの排出量の大きな原因となっているのが農業です。主に大量の窒素肥料の使用が原因です。最も一般的な形の窒素肥料である硝酸アンモニウムは、実は化石燃料である天然ガスから得られます。合衆国で使われる窒素肥料の4分の1は、家畜の飼料として育てられるトウモロコシに使われます。

 合衆国政府は地球温暖化の重要性を最小化しようとしましたが、気候の変動はすべての種の生命にとって深刻な重要性があります。控えめな予測によれば、今後100年で地球の気温は4度上昇するだろうと考えられています。環境保全主義者であるデイビッド・スズキは次のように書いています。「私たちのほとんどは、1度の変化には適応できます。しかし、4度というのは事実上、氷河期と私たちが今いるような温暖期との違いです。そのような変化が自然に起きるには1万年かかります。そして、私たちが問題にしているのは、そのような変化がおよそ100年で起こるということなのです。世界中の種に、農業に、そして気候に依存する他の生活パターンに対して、劇的な混乱を起こすことなく私たちがそれに適応できると考える環境保護論者(エコロジスト)はどこにもいません。」西洋世界の無類の肉食は、この気候変動の大きな原因となっています。

 

社会的な葛藤(conflict、利害の対立)

 食用のための植物を育てるの農業(vegetable agriculture)よりはるかに広大な土地を必要とする、無駄の多い(訳注:あるいは破壊的な)食肉産業は、過去何千年もの間、社会における経済的な衝突の原因を作ってきました。「人間の栄養のための植物性食品(Plant Foods for Human Nutrition)」に掲載された研究によれば、肉を作るために取り分けられた1エーカーの牧草地と、穀物生産用の1エーカーとでは、後者の方が5倍のタンパク質を生産します。豆類の場合は1エーカー当たり10倍、ホウレン草では28倍のタンパク質がとれます。このような経済的事実は古代ギリシャでも知られていました。このような経済的な事実は古代ギリシャにおいても知られていました。プラトン(ソクラテスの弟子)は著書「国家」の中で、偉大な哲学者ソクラテスが菜食をすすめていることを書いています。菜食をすれが国家が農業資源を最も知的に利用できるからです。ソクラテスは、人々が動物を食べ始めればさらに広大な牧草地が必要になってくることを警告しています。ソクラテスはグラウコン(訳注:プラトンの兄)に尋ねました。「昔、十分に国民を養ってきたこの国土も、今ではあまりにも小さくなってしまいました。十分ではないと思いませんか?」するとグラウコンは本当にそうだと答えました。「そして、グラウコンよ、そうなれば私たちは戦に出かけるのではありませんか」という問いに対して、「まさにその通りです」とグラウコンは答えたのでした。

 ヨーロッパの植民地開拓時代の戦争に、肉食がどれほど大きな影響をおよぼしていたのかを考えてみるのも、興味深いものです。インドその他の東洋諸国との間の香辛料貿易は、大きな争いの原因でした。当時のヨーロッパ人たちは、塩漬けの肉を食べて暮らしていました。彼らは、単調で不愉快なその肉の味をごまかすために、大量の香辛料を競って購入したのでした。香辛料取引から得られる儲けがあまりにも大きかったので、その原産地を保持するために政府や商人たちは躊躇せずに武器を使用しました。

 現在でも、世界の大規模な衝突のほとんどは食糧の不足を中心として生じています。既に1974年には、米国中央情報局(CIA)が「穀物飼育をしている食肉動物の消費を豊かな国々が急速かつ大規模に減少させない限り」近い将来世界中の人口を支えるのに十分な食料が得られない事態が発生するであろうと警告する報告書を提出しています。事態は改善していません。

 先進国における肉食は、世界の飢餓と確かに関連しています。そしてそのため、それは戦争とも関連しており、それがさらなる飢餓の原因となります。毎日世界中で4万人の子供たちが栄養不良が原因で死亡します。合衆国の家畜は、毎年合衆国の人口の5倍以上を養うに十分な量の穀物と大豆を食べます。ある研究によると、もしもアメリカ人が肉食する量を10%だけ減らせば、毎年1200万トンの穀物を人間が消費するためにまわすことができます。それは、毎年餓死する6千万人の子供と大人を養うのに十分な量なのです。

表 要 relative per acre …

 

菜食で節約する

 

さて、地政学的見方からはなれ、私たちの家計簿に目を向けてみましょう。あまり知られていませんが、穀類、豆類、乳製品は良質の高タンパク源です。同じ重さで比べた場合、多くの菜食の食品は肉よりも、この重要な栄養素(タンパク質)に富んでいます。肉100グラムあたりには、タンパク質は20グラムしか含まれていません。(もうひとつ考慮すべき事実は、肉の重量の50パーセントは水分であるということです。)比較すると、チーズやヒラ豆は100グラムあたり25グラムのタンパク質を含み、大豆は100グラムあたり34グラムのタンパク質を含んでいます。肉に含まれるタンパク質は菜食の食品中のそれより少量ですが、値段はずっと高価です。2005年8月にフロリダのあるスーパーマーケットで行われた価格調査では、サーロインステーキは1ポンドあたり7ドル89セント、おいしい菜食料理の主要な材料は1ポンドあたり1ドル50セント以下でした。8オンス入り(約230グラム)の容器に入った1ドル59セントのカッテージチーズは、1日に必要なタンパク質の60パーセントをみたします。ベジタリアンになれば、一人当たり年間少なくとも数百ドル(数万円)の節約となり、一生を通じてみれば、その金額は何千ドルにものぼります。消費者全体でみれば、年間何十億ドルも節約できることになります。これらすべてを考慮すれば、ベジタリアンにならないでいることは難しいと言わざるを得ません。